理想の自分が、自分を苦しめる
「もっと頑張れるやろ」
「そんなことで疲れるとか甘すぎる」
「何回失敗するん?」
「もっとちゃんとせな」
そんな否定的な自分の声が聞こえてくることはありませんか?
私は以前、その声は「自分の本音」だと思っていました。
実は、大学や大学院で専門的に心理学を学んでいても、そう思っていました。
でも、人の心身の健康をサポートする仕事に就く中で、
そして自分自身を振り返る中で、
「この否定的な声は本当に自分の本音なんだろうか」
「もしかしたら違うのかもしれない」
と感じるようになりました。
その声の正体とは
それは「今の自分」ではなく、
「理想の自分」の声かもしれません。
「こうありたい」
「こんな人になりたい」
そう思うこと自体は、とても自然なことです。
理想があるから、人は成長できます。
努力もできます。
だから、理想というものは本来、
私たちが行動を起こすためのエネルギーとして必要なもののはずです。
「もう少し頑張ってみよう」
「あなたならきっとできるよ」
そんなふうに、背中を押してくれる存在でもあるはずですよね。
理想は姿を変える
この必要なもののはずの理想が姿を変えると
どうなるのでしょう。
「まだまだ足りてない」
「もっと頑張らなあかん」
「そんな自分じゃあかんやろ」
「今のあなたには価値がない」
こんなふうに、「自分を励ましてくれる存在」ではなく、
「自分を裁く存在」になってしまうのです。
そして私たちは、その声を疑うことなく信じてしまいます。
仕事が思うようにいかず疲れた日も、
家事をする元気すら残っていない日も、
お酒を飲んでしまった日も、
コントロールが効かず食べすぎてしまった日も、
「できなかった自分」ばかりに目が向いてしまうのです。
苦しいのは、今の自分が悪いから?
あなたが苦しいのは、
「理想の自分だけを合格にして、今の自分にはいつも不合格をつけているから」です。
その採点の厳しさが、あなたを苦しめているのかもしれません。
もし親しい友人が、
「今日は何もできなかった」
と話したら、あなたはきっと責めないでしょう。
「そんな日もあるって」
「十分頑張ってるやん」
そう声をかけるのではないでしょうか。
なのに、自分にはその言葉をかけられない。
理想の自分という厳しい存在が、いつも隣にいるからです。
最後に
「理想を持つな」とは言いません。
理想の自分はあっていいと思います。
理想に届かなかった日があっても、それは「価値がない日」ではありません。
うまくいかなかった今日も。
思うように頑張れなかった今日も。
今日のあなたは、今日のあなたなりに生きてきました。
どうかその事実を否定しないでくださいね。
あなたの心が少しでも軽くなることを願っています。
寺島 渚紗